ワレンベルグ症候群で嚥下障害が出たら②

前回からワレンベルグ症候群の嚥下障害について、私の経験などをまとめ始めました。
今回はその二回目です。
今回は嚥下のメカニズムを簡単に説明しておきたいと思います。
医師やセラピストと治療やリハビリについて話をする場合、特に嚥下の場合は専門用語が多く出てきます。
話を正しく理解するために、患者側もある程度は知識を持っておくのが良いと思います。


嚥下、つまり食物を飲み込む動作は一般的には五つの段階で説明されます。

  1. 先行期    食物の形や量、質などを目で見て認識する
  2. 準備期    食物を口に運び、噛み砕き飲み込みやすい形にする
  3. 口腔期    食物を口の中(口腔)から咽頭に送り込む
  4. 咽頭期    食物を咽頭から食道に送り込む
  5. 食道期    食物を食道から胃に送り込む

早速、普段は使わない単語が出てきました。
咽頭(いんとう)です。
これは、ノドの奥(いわゆる「のどちんこ」の裏側)のことです。

ワレンベルグ症候群での嚥下障害は、多くは(4)の段階で問題が発生するようです。
私もそこに問題を抱えています。
この段階は、まさしく「ゴックン」と食物を飲み込む瞬間です。
咽頭期ではさらに以下の動作がそれぞれ行われます。

(a) 軟口蓋(なんこうがい)が鼻咽腔との通路を閉鎖します

食物を咽頭から食道に送り込むのは、「送り込む」と言うより「押し込む」と言う表現の方が近いイメージです。
この時、空気の圧力も使って食道に押し込みます。
咽頭は鼻とつながっているため、そのままでは空気が鼻に抜けてしまいます。
軟口蓋によって鼻との通り道をふさぎ、鼻への空気の漏れと同時に食物が逆流するのを防ぎます。

(b) 喉頭蓋(こうとうがい)が動き、気管への通路を閉鎖します

食物が誤って気管や肺に入らないように、喉頭蓋によって気管にフタをします。
(誤嚥を防ぎます)

(c) 食道入口部(にゅうこうぶ)が開きます

食道の入り口には筋肉があり、普段は収縮して閉じています。
この筋肉により、下を向いた時など胃の内容物が逆流することを防ぎます。
食物を飲み込む瞬間だけ、食道入口部が開きます。

(d) 咽頭が収縮し食物を食道に送り込みます

ノドの奥が収縮し、食物を食道に押し込みます。
ここは、少なくなった歯磨き粉をチューブから絞り出す動きに似ています。
歯磨き粉が出る部分が食道入口部で、食物は歯磨き粉が絞り出されるように食道に送り込まれます。
この際、喉頭が上前方に移動します。
「ゴックン」と飲み込む際に、首の前の中央部分(喉仏)が上に動くあの動きです。

この一連の動きは「嚥下反射」と言って、0.5秒程度で終わる瞬間の動作です。
嚥下の動きは大変に複雑で、さまざまな筋肉が連携して動きます。
この動きの一部が失われたり、タイミングが合わなくなったりして嚥下障害が発生するようです。

嚥下障害が発生すると、VF(嚥下造影検査)を行います。
医師からVFの映像を見せられて「ここが~、どうのこうの」と説明されます。
私なんかは、はじめはさっぱり理解ができませんでした。
あたりまえですが、嚥下なんて今までは無意識に行っていた動作です。
VFの映像などは、医療関係者でなければ見ないものと思います。
「ほら、ここが動いていないでしょ」と言われても、健康な時の動きを知らないので、なかなか理解ができません。

以前も紹介しましたが、嚥下の動きをわかりやすく説明したビデオがありますのでリンクしておきます。

メディカルニュートリション~栄養療法の世界~ Vol.1

「4:10」くらいから嚥下の動作の解説です。
病状を正しく理解することは、無駄な不安を減らすことにもつながると思います。
そのお手伝いが少しでもできれば幸いです。

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