ワレンベルグ症候群の温覚の現状

ワレンベルグ症候群の代表的な症状のひとつに、温痛覚障害があります。
発症から12年が経過した現在の状態を確認するため、自宅で温覚の検査を行ってみました。

温痛覚障害の回復について医師の言葉

発症当初、温痛覚障害の回復は期待できるのか、担当医師に質問したことがあります。
そのときの返答は次の通りです。

「薄皮を剥ぐように治る」

※慣用句としては「薄紙を剥ぐように」が正しいのですが、医師はこのように表現されました。

この言葉の通り、温痛覚の回復は非常にゆっくりで、段階的なものであると予想されました。
12年経過した今、実際に感覚がどの程度戻っているのかを確認するため、自分自身で検査を行うことにしました。
今回は温痛覚のうち、温覚(温度を感じる感覚)に注目して調べます。

検査方法の工夫

普段からシャワーや水道のぬるま湯を皮膚に当てて、感覚を確認するようにしています。
しかし、この方法では正確な検査は難しいです。
水圧による感覚が、温度感覚と錯覚してしまうからです。
さらに、温痛覚障害のある部位では、温度の低い冷水は痛みとなり感覚が混同します。
このため、検査にはぬるま湯を使用し、温度の微妙な差を確かめる方法を採用しました。

検査方法の詳細

以下の手順で検査を行います。

  1. 二つの温度(30度と45度)のぬるま湯を用意する
  2. 化粧用コットンにぬるま湯を染み込ませる
  3. 30度のコットンを検査部位の皮膚に当てて、感覚を確認する
  4. 45度のコットンを検査部位の皮膚に当てて、感覚を確認する
  5. 30度と45度の違いが認識できた場合、どちらかをランダムに選んで検査部位の皮膚に当てる
  6. どちらの温度のコットンかを言い当てる

検査する部位は「手の甲」、「腹部」、「太もも」にしました。
コットンを当てる作業や、ランダムに選ぶ作業は妻が行います。
私は、検査中は目を閉じ、視覚情報を遮断して温覚に集中します。

手の甲での検査結果

まず手の甲から検査を開始しました。
正常な左手で試した場合、30度と45度のコットンをランダムに当てられても、正確に判別できました。
これは、左手の温覚が正常であることと、検査方法が適切であることを示しています。
次に、温痛覚障害のある右手で検査しました。
触覚自体には問題がなく、目を閉じてもコットンの接触は認識できます。
しかし、30度と45度の違いは全く分かりません。
念の為、ランダムに選んだコットンを当てても、どちらの温度かを判別できませんでした。
手の温覚については、発症時から変化がないようです。

補足実験: 指先での検査結果

さらに、人差し指を直接お湯に入れて確認する検査も行ってみました。
左手では30度と45度の違いを明確に感じ、どちらの方がより温かいか判別できます。
しかし右手では、二つの温度差をまったく感じることができませんでした。
手の温覚は、12年経過しても回復が見られないことがハッキリしました。

腹部での検査結果

腹部の温痛覚障害は、へそを中心とした左右で明確に分かれます。
私の場合、右側に障害があります。
検査結果は手と同様で、30度と45度の違いを認識できませんでした。
ランダムにコットンを当てられても、どちらの温度か判別できません。
腹部の温覚についても、発症時から回復は認められません。

太ももでの検査結果

最後に太ももで検査したところ、興味深い結果が得られました。
右太ももにコットンを当てると、45度のコットンは30度とは微妙に異なる感覚として感じられました。
妻がランダムに当てた場合も、30度か45度か判別可能でした。
かすかに温覚が残っている、あるいは回復している可能性があります。

まとめと今後の課題

今回の検査から分かることは以下の通りです。

  • 手の甲と腹部:発症時から変化なし
  • 太もも:温覚がかすかに残っていて、発症時より回復している可能性あり

残念ながら、一番に必要な手の温覚が回復していません。
課題もありました。
太ももの温覚が発症後から回復したものなのか、確信を得られなかったことです。
発症時に詳細な検査をしていなかったため、現状との比較ができません。

長期的な観察の重要性

この疑問を解決するためには、今後も同じ検査を継続し、変化を観察することが重要です。
5年後、10年後に再度検査し、温覚が改善していれば「薄皮を剥ぐように」回復している証拠になります。
変化がなければ、現在の状態が発症当初から続いていると考えられます。
ワレンベルグ症候群の温痛覚障害の回復過程を理解するには、長期的な観察と記録が不可欠です。
今後も定期的に検査を行い、その結果をこのブログで報告していきます。

右手の甲に濡れたコットンを当てて温覚の検査をしている画像
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