ワレンベルグ症候群で嚥下障害が出たら⑦

「ワレンベルグ症候群で嚥下障害が出たら」の7回目です。
今回は嚥下改善の手術について書きたいと思います。
私はリハビリを続け、半年後にはクチからなんとか食事ができるまで嚥下障害を回復させることができました。
しかし、もっと普通に食事をしたい思いから、1年後に手術を受けました。
現在でも嚥下障害は残っていますが、手術前よりは改善しました。


手術や投薬による治療は、症状が改善するメリットもあれば、副作用によるデメリットもあります。
特に手術の場合はデメリットがあったからと言って、おこなった手術を取り消すことはできないと思います(手術によっては可能な場合もあります)。

今まで無意識に行っていた「飲み込む」という動作が、病気を境に突然できなくなりました。
なぜ「飲み込む」ということが行えないのか?
理由を理解することはたやすくはありませんでした。
食物をかみ砕いて、飲み込む(ノドの奥に送り込む)感覚は今までとは何も変わりません。
ここからが元気な頃とは違います。
まるで硬いものをかまないで飲み込んだ時のように、ノドの奥で食物が引っかかります。

嚥下障害が発生するとVF(嚥下造影検査)を受けます。
VFでは飲み込む時のノドの動きを、レントゲンの動画として見られます。
VFの映像を見ても、何が問題なのかはサッパリ分かりません。
当然です。
飲み込む時のノドの動きは自分では見られないし、今までVFなんて見たこともないのですから。

飲み込めない原因を医師に訪ねました。
医師は「食道入口部が開かなくなっている」と言いました。
「ノドの奥、食道の入口にある弁のような動きをする部分が、脳梗塞が原因でまひして動かない」のだと。
それ以来、自分の嚥下障害は食道入口部の開大不全(入口が開かない)が原因と思い込んでいました。

その後、食道入口部の開大不全は手術によって改善できることを知りました。
食道入口部は筋肉によって普段は閉じています。
筋肉にちからを入れると、入口部が開く構造になっています。
この筋肉を手術で取り去ってしまいます。
そうすれば、入口部は開いた状態(実際はゆるく閉じた状態)になるので、飲み込みが改善されるとのことでした。
手術をすることには抵抗がありましたが「ワラをもつかむ」思いもあり、思い切って受けることにしました。

私が受けた手術は、正確には「輪状咽頭筋切除術」という名称です。
手術前の「飲み込み状態」の点数は、自分でつければ30点です。
もちろん健康な時を100点とした場合です。
ゼリーのようなものなら多少は飲み込めたので、0点ではありません。

手術を受けたのちの点数は40点です。
手術前より10点の改善です。
なぜ10点かと言うと、期待していたほどの改善がなかったからです。
(手術そのものは、大成功だったようです。)
手術の副作用は複数ありますが、ひとつひとつは我慢ならないほどのものでもありません。
特には書きませんが、普段の生活で多少の制限があるだけです。

手術後しばらくして、別の新たな病院を受診しました。
そこの医師から今までとは異なる話を聞きました。

  • 飲み込めない原因は、食塊を食道に押し込む圧力が足らないことも原因
  • 食道入口部の開大不全は飲み込めない原因の一部であって全部ではない
  • 失われた「食塊を食道に押し込む圧力」を取り戻す、効果的な方法はない

今まで食道入口部の開大不全がすべての原因と思っていましたが、他にも原因があることが分かりました。
先にこの話を聞いていたら、手術を受けなかったかもしれません。
手術による改善効果が10点しか上がらなかった理由(自己採点ですが)を納得しました。

なにが言いたいのかというと、

  • 手術はメリットもあればデメリットもあり、しっかりと納得しておく
  • 手術による改善度合いは主観的なことであり、医師からの話だけでは判断がとても難しい
  • 手術を受けしまったら、手術前の元の状態には戻せない(場合が多い)
  • ひとりの医師の話だけを「うのみ」にしない

ということです。
私自身、手術に対して期待していたほどの効果がなかったため、手術を受けたことを後悔した時期がありました。
今でも40点の考えには変化がありません。
しかし、トータルでは手術を受けて良かったと考えるようになりました。

嚥下障害の問題は医療の世界でも遅れている分野なのだそうです。
今後の発展に期待し、いつかは元気な頃のように食べられる日を夢見ています。

2件のコメントがあります

  1. thammadaa さん

    いつも見させて頂いております。自分もくも膜下出血→心配停止→脳梗塞になり、ワレンベルグ症候群と診断されました。
    嚥下障害もあり胃ろうです。
    中々飲み込みができませんね。
    おまけに水頭症でシャントしています。
    去年に大腸ガンの診断があり手術しました。その時にシャント感染して只今シャント抜去中です。
    色々大変ですがお互い頑張りましょう。

    1. のすけパパ

      こんばんは
      ブログにお越しいただきありがとうございます。
      想定外のことが起きるから人生なのでしょうが、ふと「ため息」が出る時があります。
      でも「生きているんだから、顔を上げなきゃ」と思います。
      気持ちは絶対に病気に負けぬよう、お互い頑張りましょう。
      クチから食べれますようお祈り致しております。

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