えっ?味がしない!①

嚥下障害から食べられるものが限られるため、普段はかみさんがわたし用に作ったものを食べています。
でも、家族サービスと気分転換を兼ねてたまに外食をします。
その日はカレー屋さんで外食することにしました。
からいものが苦手なので私はハヤシライスを注文しました。

子供の頃からハヤシライスが好きでした。
それもたくさんケチャップを使った甘めが好きです。
そんな味を想像しながら、ハヤシライスを口に入れました。

「あれ?」

なにか違和感があります。
もう一度、スプーンですくって口に入れます。

「えっ?」

味がしません!
あのケチャップ系の濃いハズの味を感じないのです。
カレーコロッケも頼んでいたので、それも食べてみます。
コロッケも味を感じません。

背中から冷や汗が出るのが分かります。
私が発症しているワレンベルグ症候群では、味覚障害が出ることもあります。
頭の中では、
「発症して5年になるのに、いまさら味覚障害が発生?」
「まさか再発して、新たな脳梗塞か??」
頭の中を考えがぐるぐる回ります。
体から血の気が引いてきます。
恐らく顔面蒼白になっていたと思います。

やっと冷静に戻って、かみさんに言いました。
「味がなんにも感じない」
「すぐに病院に行きたい」
もし脳に何か問題が発生しているのなら、一刻を争います。

ちょうどカレー屋さんには車で来ていたので、そのまま病院に行くことにしました。
病院は脳梗塞を発症した時にお世話になった急性期病院に行くことにしました。
その日はあいにく土曜日の夕方で、もう外来の受付は終了しています。
救急外来に車をまわし、受付で症状を言います。
「急に味覚を感じなくなった、できればMRIで脳の検査もしてほしい」
受付の方が医師に連絡しているのか、しばらく待たされました。
こんな時は、時間が過ぎるのをものすごく長く感じます。
イライラしながら待っていると、受付の方が来られました。
「当直の医師はあいにく入院患者の対応をしていて、診られるのは一時間後です」
「MRIはメンテナンス中で、今日は使用できません」
「それでも良ければ、診察します」

自分の運の悪さを少し感じながら、他の病院に向かうなら決断しなければなりません。
こんな大切な決断をかみさんに委ねると、万が一にも悪い方に結果が転ぶと、かみさんの精神的負担が大きすぎます。
自分で決断することにします。
少し悩んでいると、再び受付の方が来られて、
「医師がもう少しで手が空くようです」
「MRIのメンテナンスも、もう少しで終わるようです」

この病院なら、私のカルテや過去のMRI画像もあります。
私は他の病院に向かわずに、この病院で医師を待つことにしました……

(続く)