ワレンベルグ症候群による嚥下障害で12年間クラシックコンサートを我慢していた私が、症状改善を経て再び生演奏を楽しんだ体験談です。
愛する音楽との再会までの苦悩と喜びを綴ります。
私とクラシック音楽との出会い
私の人生において、クラシック音楽は特別な存在です。
その出会いは今から約40年前、二十歳の頃にさかのぼります。
きっかけは、当時お付き合いしていた女性に誘われて観に行った映画「アマデウス」でした。
天才作曲家モーツァルトの生涯を描いたこの名作は、クラシック音楽に馴染みのない人でも楽しめる映画として知られています。
当時の私はクラシック音楽に特別な関心を持っていませんでしたが、「アマデウス」を観た瞬間、人生は大きく変わりました。
まさに「どハマリ」してしまったのです。
特にピアノの音色に心を奪われ、独奏曲はもちろん、ピアノ協奏曲に深い愛情を抱くようになりました。
クラシックコンサートに通い続けた日
映画をきっかけに、私はクラシックコンサートに足繁く通うようになりました。
年に数回は必ずホールに足を運び、生演奏の迫力に酔いしれたものです。
思い出深いのは、憧れのピアニストが来日した時のこと。
東京で行われた全公演に通ったほど、熱中ぶりは並外れていました。
以来40年、クラシック音楽は私の人生に喜びと感動を与え続けてくれる、かけがえのない存在になっています。
ワレンベルグ症候群発症による音楽生活の変化
しかしその後、ワレンベルグ症候群を発症したことで、音楽との関わり方は大きく変わりました。
最も楽しみにしていたクラシックコンサートに通うことを断念せざるを得なかったのです。
理由は嚥下障害による症状でした。
唾液を正常に飲み込めなくなり、外出時は蓋付きのタンブラーを持ち歩き、唾液を吐き出す必要がありました。
コンサート会場では飲食禁止のため、その行為はどうしても「飲み物を飲んでいる」ように見えてしまいます。
私はそれに強い抵抗感を抱き、ホールから足が遠のいてしまいました。
嚥下障害がもたらす鑑賞への不安
さらに深刻だったのは、唾液が気管に入ってしまい激しく咳き込む症状でした。
クラシックコンサートでは静寂の時間が長く、少しの咳でも大きな迷惑になりかねません。
演奏者や観客の集中を妨げる恐怖から、コンサートに行く勇気を持てなくなったのです。
こうして私は、長年続けてきたコンサート鑑賞を諦めざるを得ませんでした。
12年間の我慢と症状の変化
ワレンベルグ症候群を発症してから12年間、私はコンサートを我慢し続けました。
しかしその間に少しずつ症状は変化しました。
発症直後は頻繁に唾液を吐き出していましたが、意識的に我慢することで2時間程度なら持ちこたえられるようになりました。
また咳き込みも以前ほど頻繁ではなくなり、コンサートの時間であれば大きな問題は起きにくいと感じるまでに改善しました。
こうして私は再びホールへ足を運ぶ決心を固めたのです。
12年ぶりのコンサート鑑賞
コンサートへ行くにあたっては、細心の準備をしました。
咳き込みの可能性を考え、出口に近い席を選び、いつでも退席できるようにしたのです。
ステージから遠ざかる不満よりも、他の観客への配慮を優先しました。
こうして万全の体制で、12年ぶりのコンサートに臨みました。
感動の復活体験
いよいよ当日。妻とともにホールに向かい、緊張と期待の入り混じる中で開演を待ちました。
頭の片隅には「咳き込んで途中退席するかもしれない」という不安がありました。
しかし、演奏が始まった瞬間、その不安は完全に消え去りました。
生演奏の力強さに心を奪われ、何度も鳥肌が立ちました。
時間はあっという間に過ぎ、最後まで咳き込むことなく鑑賞できたのです。
この体験は、私にとって大きな喜びと自信を与えてくれました。
新たな希望と今後への期待
この成功体験により、私は再び音楽を楽しむ勇気を得ました。
「次はもっとステージに近い席で聴いてみたい」、そんな希望も生まれました。
すでに次のコンサートは手配済みです。
年末恒例のベートーヴェン「第九」。
あの名曲を生で聴ける日が再び訪れることに胸が高鳴ります。
ワレンベルグ症候群という病気と歩みながらも、音楽と再会できたことは大きな希望です。
この体験が、同じように困難を抱える方々に少しでも励みとなれば幸いです。


