7/29は土用丑の日だった。
その日に浜松へ行った。
退院してから初の長距離の移動である。
別に鰻を食べに行ったわけではない。
鰻は大好物なので、元気な頃なら食べる目的だけで浜松へ行ったかもしれない。
鰻を食べに浜松へ行きたい。
だが、今は嚥下障害があるので普通の食事ができない。
嚥下障害の治療で有名な医師が浜松にいる。
今回は嚥下障害回復の最終手段である手術の相談をするために、その医師を訪ねて浜松に来たのである。
病院に到着し、検査が始まった。
喉の状態を見るために、VE(嚥下内視鏡検査)とVF(嚥下造影検査)を行った。
VEは内視鏡を鼻から入れて、喉の状態を直接見る検査。
VFは造影剤の含んだ食物を食べながら、レントゲンで喉を見る検査。
二つの検査によって、飲み込みができない原因や誤嚥がないかを確認する。
VEを行いながら声を出すと、声帯の左側も麻痺していることが分かった。
検査が終わり、しばらくして診察室に呼ばれた。
まず状態の説明。
飲み込みがしつらいのは、
- 食道の入り口が開きにくい
- 飲み込むときは喉がすぼんで食物に圧力をかけて食道に送るのだが、喉がすぼまらず圧力が逃げる
この二つが原因である。
次に手術の適応についてだが、手術によってこの二つの改善を目指す。
- 食道の入り口を閉めている筋肉を切断して、食道が開いた状態にする
- 圧力が逃げないように喉の空間を狭くする
私は手術の適応が可能で、術後はかなりの改善が期待できるとのことである。
今回、浜松に来て色々と分かったが、喜ばしいことと、ショックなことがある。
【喜ばしいこと】
- 手術の適応が可能、術後は改善が期待できる
- 手術は全身麻酔が必要だが、首を開く必要がなく口からの手術で対応が可能
【ショックなこと】
- もし手術をしない場合、今後リハビリだけで嚥下が改善する期待は薄い
- 術後に一か月半から二か月程度リハビリ入院が必要(浜松で)
- 術後は食道が開いているので、寝るときも上半身を15度ぐらい起こしておく必要がある
特に「ショックなこと」の(3)が悩ましい。
「これから一生、寝る時は上半身を少し起こさなければならない」と思うか、
「これから一生、寝る時に上半身を少し起こしておくだけで良い」と思えるか。
結論はもう少し考えてから出すことにする。
ただ恐らくは手術しないと、元気な頃みたいに食べれるようにはならないだろう。
写真は病院の会計の後ろに飾ってあったものである。
嚥下研究の第一人者である、マイケル・グロハー氏が書いたものらしい。
口から食べることの素晴らしさを、私もつくづく感じる。
帰りは浜松の駅で鰻弁当を買った。
今日、付き添ってくれた妻用である。
妻は昼食も食べれなかったので、弁当は新幹線の中で食べてもらった。
美味しそうに食べている妻の姿を見ていて、それだけで嬉しかった。
付き添ってくれた妻に感謝である。
実は自分用のうな丼も自宅には用意してある。
嚥下障害者用の季節限定のうな重である。
自宅に帰ってから食べたが、これもとても美味しかった。