髭剃りが嫌いになった。
もともと髭剃りが好きだったわけではない。
元気な頃は鼻の下と顎に髭を蓄えてた。
肌が荒れ性だったこともあるが、毎日髭を剃るのが面倒だった。
仕事で徹夜もよくやった。
だいたい徹夜明けは伸びた髭でバレるので、髭を蓄えていると徹夜明けがバレにくいメリットもあった。
脳梗塞を発症して、体に異常感覚が生じた。
首から下の右半分は温痛覚障害である。
首から上の左半分、顔面の左側は温痛覚障害に加えてしびれも起きている。
まるで抜歯するときの麻酔をしたような感覚がずっと続いている。
障害側の体には、自分であまり触れたくはない。
触れると異常感覚を再認識することになる。
「あ~、やっぱり体の感覚はおかしいのね」と思うことになる。
自分で意識的に触れないようにしている。
肌が荒れ性なこともあって髭剃りには電気シェーバーを使っている。
電気シェーバーでの髭剃りは電気シェーバーの先を肌にこすりつけることになる。
この感覚が嫌なのだ。
しびれがあって、そして感覚の鈍った皮膚に、電気シェーバーをこすりつけなければならない。
これが気持ちが悪い。
「あ~、やっぱり体の感覚はおかしいのね」の思いがまた頭を巡る。
まだ本格的には仕事に復帰していないので、毎日は剃っていない。
いずれ仕事に復帰すれば毎日剃ることになるのだろう。
そうなったら、また髭を蓄える手もある。
でも、髭を蓄えると、実はそれはそれで手入れが大変なのである。
ハサミで髭を揃える作業は、指先の高度な動きが必要である。
今の私には、それは難しい作業な気がする。