「嚥下障害」、テレビで耳にした記憶はあります。
しかし、発症前は自分から口にしたことはありません。
意味は分かっているつもりでした。
それでも「食べられなくなるのは、さぞかし大変なのだろう」程度の理解です。
自分が当事者になるとは、頭によぎったこともありません。
「嚥下障害」、ワレンベルグ症候群の特徴的な症状です。
今回は「症状の変化」の四回目です。
ここでは、嚥下障害に焦点を当ててみたいと思います。
「延髄外側の梗塞による嚥下障害の発生率は、おおよそ3割である」
当時の記憶が正しければ、医師からこう聞きました。
「嚥下障害が発生した内の、さらに3割が後遺症として残る」
続けて、このようにも聞きました。
たとえ嚥下障害が発生しても、多くの方は回復するのです。
そうなると、全体の約1割で嚥下障害が後遺症として残ります。
私は残念ながら、その1割に入ってしまったことになります。
脳梗塞の発症後、すぐに嚥下障害に気づきました。
水を飲むと、水が鼻から吹き出すのです。
何度か試してみましたが、症状は変わりません。
検査を受けると、嚥下障害と診断されました。
入院中の栄養摂取は経鼻経管栄養で行います。
この状況は数ヶ月続きました。
嚥下の検査以外では、口から食べられずにいました。
発症直後は嚥下障害を楽観視していました。
同じ症状で回復した事例をインターネットで見つけました。
前述の医師からの話と併せ、自分では必ず回復すると信じ込んでいました。
しかし、リハビリを続けましたが、目覚ましい改善はしませんでした。
食物を飲み込めるようにはなりましたが、個体は柔らかくして小さく刻む必要があります。
液体はまったく無理です。
液体は飲み込むと気管に入ってしまい、誤嚥して激しく咳き込みます。
健常者は「喉頭蓋」という組織が、飲み込んだものが気管に入ることを防ぎます。
私は喉頭蓋が麻痺して動かないようです。
ラーメン等もスープが気管に入ってしまうため食べられません。
液体を飲み込めない問題は解消されず、そのまま退院しました。
その後、「咽頭筋」という喉の筋肉を切除する手術を受けました。
手術後は個体を柔らかくしなくても飲み込めるようになり、嚥下は一歩前進しました。
液体はまだ無理なままです。
さらに、唾液が飲み込めないという問題もありました。
唾液も液体ですが、誤嚥とは別の問題で飲み込めません。
通常、嚥下時には喉の奥が収縮し、食物を食道へ押し込むように動きます。
私の場合はその収縮も麻痺しているようです。
唾液のような粘性のある液体は重力で食道に流れることはなく、喉の奥に滞留します。
滞留した唾液は吐き出すしかありません。
嚥下障害のまとめは以下のようになります。
- 完全な液体は誤嚥し、液体を多く含む食べ物も誤嚥することがあります。
- 誤嚥しないように注意深く食事しますが、それでも誤嚥して激しく咳き込むことがあります。
- 咳き込むと周囲に迷惑をかけるため、外食する勇気が出ません。
- 唾液は定期的に吐き出さなければなりません。
前置きが長くなりましたが、現在の状態は以下の通りです。
- 完全な液体でも、少量ずつなら誤嚥せずに飲み込めるようになりました。
- 鍋物やラーメンなどの液体を多く含む食物も、注意すれば食べられるようになりました。
- 誤嚥しての激しい咳き込みは、随分と頻度が下がりました。
- 依然として唾液だけは飲み込めません。
十年前と比べれば、大きく改善したと言えます。
それでも麻痺していた筋肉が、動くようになった自覚はありません。
誤嚥をしにくい飲み込み方を身につけ、誤嚥の頻度が下がったのが大きく改善した要因だと考えます。
今の状態で、ラーメンを食べられることは大きな喜びです。
週末には家族と一緒にラーメンを食べに行くことが、今は日課となっています。
お久しぶりです。自分はもうすぐワレンベルグになってから8年経とうとしています。自分も嚥下障害があり、顔を右に向けないと飲み込めないです。最初の頃はしっかりと横向かないと飲めずにむせていましたが、最近は少し右に向ければ飲み込めるようになってきました。それでも以前のようにゴクゴク飲める訳ではなく、お茶とか飲むときはやっぱり緊張します。あと、飲み込むには右向きが良いのですが、会話するときなどは右に向いていると、不用意に唾液が流れてしまって苦しい時があります。仕事中机に向かっている最中に横から話しかけられて、顔だけ右向きになる状況があるので…。いちいち体ごと正面向くのも難しいので気をつける他ないですが。
こんにちは。
私もゴクゴクと飲めた頃が懐かしくてたまりません。
とにかく注意していても、唾液等が気管に入るときがあって苦しいです。
それと一番恐れているのは、認知症なることです。
認知症になって嚥下障害も分からなくなると、健康な頃のように水を飲んでしまいそうです。
努力すれば叶うか分かりませんが、認知症にならないようにすることも大切に思っています。