お湯は水より飲みにくい

先日、少しおなかを下していたので、軽く温めた「お湯」を飲みました。
そうすると、普段飲んでいる「冷たい水」に比べて飲みにくいことに気が付きました。
どうして飲みにくいのか?
今回はその理由について考えてみました。

わたしは嚥下障害なので、液体を飲むことはとても危険です。
口を開けた喉の奥は、食物を胃に送るための入り口(食道)と、空気を肺に送るための入り口(気管)が隣り合っています。
食物を飲み込む際には、食物が誤って気管に入らないように、「喉頭蓋」という組織が気管の入り口に蓋をします。
私はこの喉頭蓋が麻痺して動きがにぶくなっており、食物を飲み込む際に気管の蓋が不十分な状態になっています。
固形の食物なら大丈夫なのですが、液体は気管に流れてしまうことがあるため危険なのです。

ところが、わたしは液体がまったく飲めないわけではありません。
ストローを使って少しだけ液体を口に含み、ゆっくりとゆっくりとなら飲めます。
この飲み方ならば、液体が気管に流れ込むことを防げます。
一回でゴクッと飲める量は、小さじの半分ぐらいです。
それでも、少し油断すると、液体が気管に入って激しくむせてしまいます。

普段、水分を摂る場合は嚥下障害者専用の「水分ゼリー」を使います。
これなら物質がまとまっている状態なので、気管に流れ込むことがありません。
ただこのゼリーは、うす甘い味が付いていて、ときには味が無い「ただの水」が飲みたくなることもあります。
その場合は、氷を入れた冷たい水を前述のようにストローでゆっくり飲みます。

先日、少しおなかを下しました。
水分ゼリーも冷蔵庫で冷やしているものなので、おなかを下しているときは飲みたくはありません。
そこで、軽く温めたお湯(白湯:さゆ)を飲むことにしました。
白湯を飲んでみると、いつもの冷たい水とは何か感じが違います。
もちろん暖かさは違うのですが、それ以外に何かが違います。
口の中や喉の奥で、白湯がじわっと広がって行く感じがするのです。
冷たい水と比べると「さらさら」として速く広がる感じがします。
喉の奥では散らばってしまって、気管に白湯が流れ込んでしまいそうになるのです。

この違いは何が原因なのかを考えてみました。
どちらも何も入っていない、元は「ただの水」です。
違うのは温度だけです。
一方は氷を入れているので、0度に近い温度。
もう一方は軽く温めているので、約40度~50度。

気がつきました!
水は温度が上がると、表面張力が小さくなる性質があることを思い出しました。

この性質を利用したものが、車のヒーテッドドアミラーです。
ドアミラーは、雨が降ると水滴が付いて見にくくなります。
ヒーテッドドアミラーは、スイッチをONにするとミラーに内蔵された電熱線がミラーを温めます。
ミラーが温まると、表面に付いた水も温まり表面張力をなくします。
表面張力のなくなった水は水滴の状態を保てなくなり、ミラーに映った像を見やすくします。

もうひとつ例を挙げておきます。
耳に水が入ったときです。
水が入った耳を下側にして横になると、しばらくすると耳から水がポロッと流れ出ることがあります。
これも耳に入った水が、体温で温められて表面張力がなくなる現象です。

白湯が冷たい水と比べて、「さらさら」に感じたり、じわっと広がって行く感じがしたりするのは、表面張力が小さいことが原因だと思います。
間違っていましたら、ごめんなさい(コメントいただけると幸いです)。

水分を飲みやすくするために、「とろみ剤」というのがあります。
これを入れると、液体にとろみが付いてまとまりやすくなり、喉で広がることを抑えてくれます。
一応無味無臭と言うことなのですが、どうもわたしはこれが苦手です。
皆さんはいかがですか?

<ちょっと追記>
水分ゼリーもとろみ剤も、飲み込んだ時にゆっくりと食道に落ちる性質があり、これも嚥下障害者の飲み込みを助けています。

水滴の写真

2件のコメントがあります

  1. 高丸 さん

    3年前の48歳のときクモ膜下出血で倒れてグランベルン症候群になりました。現状嚥下が全くできず、複視(物が2重に見える)など多数の後遺症に悩まされている者です。 
     以前からブログの存在は知っていましたが、今回初めてコメントしました。
     気持ちが手に取るようにわかります。
     

    1. のすけパパ

      こんにちは。
      ブログにお越しいただきありがとうございます。
      嚥下障害はつらいものですが、少しでも改善できることを祈ってます。
      同病の方へ少しでも情報が提供できれば、私としても嬉しいです。
      お互い病気には負けないように、これからも頑張りましょう。

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