ワレンベルグ症候群による平衡感覚障害

ワレンベルグ症候群による平衡感覚障害について、私の経験をまとめました。
脳梗塞を発症して平衡感覚の障害は強く感じました。
しばらくは障害に苦しむ日々を過ごしましたが、今は普段の生活が不自由のないレベルまで回復しました。
それでも時折は平衡感覚の障害を自覚することはあります。

障害の自覚と症状

ほんとうの発症直後は、ベッドで寝ているだけなので障害は自覚できません
特に平衡感覚については体を起こさなければ、意識することはまったくありません。
ベッドに腰を掛けたり上体を起こしたりするようになると、徐々に障害を自覚します。
私は発症から10日ほど過ぎた頃に障害を自覚をしました。
はじめに自覚した症状は、上体を起こすと体が左にゆっくりと倒れて行くことです。
これは独特で今までに経験のない感覚です。
まるで誰かに肩をつかまれて引っ張られているかのようです。
おなかに「ちから」を入れて、体が倒れないように意識しないといけません。
それかベッドに左手をついて支えるかのどちらかです。
この感じは消えることはありません。
立つことができるようになっても、立っている時は上体が左に引っ張られます。
そのために、歩くようになっても歩くコースが徐々に左へズレます。
廊下をまっすぐに進もうとしても、磁石に吸い付くように左の壁に寄って行ってしまいます。

原因の気づき

体が左に引っ張られる感覚は、原因が分からないまま時間は過ぎました。
自分ではこれが「平衡感覚の障害」というものなのだと思い込んでしまったため、医師やセラピストに相談をすることをためらっていました。
ある日、ベッドで上体を起こしている時にふと鏡を見ました。
見て驚きました。
鏡に映っている自分の姿が左に傾いているのです。
角度でいうと10度~15度くらいですが、わずかに傾いています。
でも自分では、まっすぐに体を起こしているつもりなのです。
これがミソです。
引っ張られる感じがあっても、傾いているのを自分では感じないのです。
試してみると分かりますが、少しでも体が傾けば重力によって傾いている側に引っ張られます。
引っ張られる感じがする原因に、やっと自分で気づきました。

病気との関係

平衡感覚障害の直接の原因は、三半規管から小脳へつながる神経経路が脳梗塞によって途絶えてしまったことです。
三半規管は耳の奥にある、平衡感覚をつかさどる大切な器官です。
三半規管から延髄までの神経経路は左右で交差せずにつながるため、延髄梗塞の発生している側に障害が出ます。
(左右で交差する神経経路もあります。例えば、首から下の温痛覚は交差しているため、温痛覚障害は延髄梗塞の反対側に現れます。)
おそらく、私は左側の三半規管からの信号が脳にほとんど届かなくなっているのではと想像しています。
平衡と認識するために、左右両方の三半規管からの信号を、脳がどのように処理をしているのかは私には分かりません。
しかし片方に障害が発生すると、脳は障害の発生した側に傾いている状態が「正しい平衡」と認識しているのだと思います。
脳が状態を誤認しているとも言えます。
これは延髄外側梗塞の典型的な症状のひとつです。

リハビリ

鏡を見れば体は傾いているのですが、自分の感覚ではまっすぐなつもりです。
鏡を見て傾いていることを確認しても、目を閉じるとまっすぐに感じます。
これは自分が生まれてから体得した「平衡(水平)」という感覚が、病気によってくるってしまったかのような感じです。
リハビリはこの感覚を矯正することから始めました。

矯正の方法は簡単です。
正面に鏡を置いて、鏡の中の自分がまっすぐになるように上体の位置を調整するのです。
初めは違和感があります。
傾いているのがまっすぐだと感じるようになってしまっているので、鏡を見て矯正すると逆に傾いているように感じるのです。
普段も鏡を見つければ、自分の姿を映して傾きを矯正します。

次は鏡がなくても傾きが分かるように訓練します。
柱や壁、家具の垂直や水平の線に利用して、体の傾きを確認します。
混乱して傾きが分からなくなれば、再び鏡の前に行って確認します。
少し訓練すれば、鏡がなくても体の傾きが分かるようになります。
体の感覚で平衡を確認するのではなく、目で見て(目視によって)平衡を確認するのです。

訓練の開始から一か月もすれば、意識的に傾きを確認する必要はなくなります。
慣れて無意識に行えるようになったものと思います。
同時に体が引っ張られる感覚も消えました。

片足立ち

リハビリ中は、片足立ちの検査を頻繁に行います。
「歩く」動作は片足になっている状態があるのですから、当然、片足立ちができなければ歩くことは始まりません。
片足立ちには平衡感覚が必要なのですから、歩く動作と平衡感覚は密接な関係です。
それとリハビリで平衡感覚がどのくらい回復したのかを、片足立ちの持続時間なら定量的に測定ができるので、検査は頻繁に行います。

私はこの片足立ちには、とても苦労をしました。
発症直後は5秒ともちません。
ここでも延髄梗塞の発生している側、つまり左足での片足立ちが苦手です。
片足立ちの持続時間の変化は、

  • 発症一か月目 片足立ちはほとんどできない
  • 発症三か月目 ギリギリ10秒程度
  • 発症六か月目 20秒前後
  • 発症一年目  1分以上

このように退院後に、片足立ちの持続時間は劇的に改善することができました。
退院して自分で片足立ちの訓練を積極的におこなったわけではありません。
改善した理由を考えてみました。
心当たりは、ズボンやパンツを脱いだりはいたりするのを立ったままおこなったことです。
この動作を行うには、片足立ちの状態を一定時間キープする必要があります。
なぜ立ったまま行うのかは、単に私が横着なだけです。
私の性格が、無意識の訓練につながったようです。
ここから分かったことは、いかに日常生活に訓練を組み入れることが大切なのかです。
無意識に毎日訓練することは、機能回復にとても効果が高いと感じます。

現在の状態

座ったり立ったりしている状態で、体が引っ張られる感じはありません。
たまには鏡で自己チェックを行いますが、体が傾いていることはありません。
普段は出かける時は「つえ」を使っていますが、つえがなくても少しなら歩けます。
しかし水平に傾いている道路や坂道はふらつきます。
想像するに、平衡の確認を目視に頼っているため、傾いている道路や坂道では平衡を錯覚してしまうのではと思います。
そのために平衡感覚が狂ってしまい、バランスが取れなくなります。
また歩いている時に考え事をすると、左に寄ってしまうことがあります。
目視で平衡を保つことが、考え事によっておろそかになるのが原因と思います。

最近、本来の三半規管による平衡感覚は戻っていないことに気付きました。

我が家は寝る時は照明をすべて消します。
つまりは真っ暗な状態です。
普段は私が先にベッドに入ってから、妻が照明を消していました。
最近、妻より遅く寝ることがしばしばあります。
私のベッドは寝室の入り口から奥側なので、短い距離ですがベッドまで歩く必要があります。
妻は先に寝ているので、寝室は真っ暗な状態になっています。
この真っ暗な状態では、歩くのができないことに気付いたのです。
何もつかまらないと、フラフラしてまったく歩くことができません。
平衡や上下さえも頭の中で混乱している感じです。
このことから、三半規管による平衡感覚は今でも戻っておらず、平衡感覚は目視にほとんど頼っていることが分かります。
それが証拠に、目を閉じると片足立ちがまったくできません。
それでも明るい所であれば、普段の生活では不自由を感じません。

まとめ

失った平衡感覚を目視で補うのも代償動作のひとつとです。
リハビリによって本来の機能が回復するのが望ましいのは当然です。
元気な頃のように、目を閉じていても平衡が分かるようになるのは理想です。
本来の機能を取り戻すことを諦めてはダメだと思いますが、それよりも普段の生活が普通に送ることの方が大切です。
言うまでもなく、生活の質(QOL:Quality of life)の向上を図ることです。
同じ病気の皆さんのQOL向上に、このブログが少しでも役立てれば幸いです。

『ワレンベルグ症候群による平衡感覚障害』へのコメント

  1. 名前:ななし 投稿日:2018/07/22(日) 20:22:34 ID:a5e2e1ae5 返信

    いま同じような症状で苦しんでいます。
    とても勇気づけられます。

    • 名前:のすけパパ 投稿日:2018/07/29(日) 21:23:13 ID:b3cfc594a 返信

      こんばんは。
      ブログにお越しいただきありがとうございます。
      平行感覚は本来の能力はなかなか戻らないですね~。
      なにか良い訓練方法があれば良いのですが。
      お互い、くじけることなくがんばりましょう。