ドラマのように看護師から名前を呼びかけられて、目を覚ましたのかは分からない。
とにかく寒くて、体がガタガタと震えていることに気づいた。
自分は手術を受けていて、全身麻酔から覚めたことを「ぼんやり」と自覚した。
「麻酔からは無事戻ってきたんだ」と思った。
「寒いですか?、もうすぐ温まりますから」
看護師の声が聞こえる。
しばらくすると、体の左側は電気毛布のようなもので温められていることがわかる。
だが右側は暖かくない。
「なんで半分だけなんだよ」と頭の中で文句を言っていた。
この手術によって、いろいろな障害が全部改善するかのような錯覚をしていた。
体の右側は温痛覚障害であることを思い出した。
手術は嚥下障害を改善するためで、他の障害は何も変わらないことに気がついた。
右側が暖かくないことを納得した。
病室に戻ってきた。
妻と実兄が待っていた。
手術のために、兄が大阪から駆けつけてくれた。
こういうときは、男の家族がいてくれると心強い。
のどが痛い。
痛みの強さは、風邪をひいてのどが痛い時の十倍ぐらいか。
唾液は飲み込めないので吐き出す。
血の塊でレバーのような感じのものが口から出る。
当分、のどからの血の処理と痛みとの戦いだ。
のどが腫れているのか、声が出しづらくて話せない。
それでも妻に「こんな体になってゴメンね」としぼり出していった。
今まで何回かいったけど、また心配と苦労をかけている妻にどうしてもいいたかった。
これ以上は話すのは無理なので筆談に変えた。
「治ったら何を食べに行きたい?」
私が妻に質問したことだ。
この病気になってから外食に行っていない。
「焼き牡蠣が食べたい」
妻は牡蠣が好物で、牡蠣が食べれる季節だ。
季節になると、よく食べに行っていたお店があった。
なんとか牡蠣がおいしい時期に退院して、妻と食べに行きたい。
焼き牡蠣いいですね(^^)/
後、4ヵ月くらいは食べられますね。
楽しみですね。リハビリが早く終われば良いですね(^o^)
楽しみです。
食べれない苦しみは、言葉では表現しきれないぐらいです。