手術室から戻ってくると、またチューブだらけの体になっていた。
鼻には経管栄養用。
尿道には排尿用。
腕には点滴用。
どれも脳梗塞の発症時に経験済みなので、別に驚きはしないが。
手術は太い金属のパイプを口に入れて行うと聞いていた。
仰向けなのか横向きなのか手術中の姿勢は聞いていないが、その姿はあまり想像したくない。
金属のパイプが前歯に負担をかける。
歯科医も立ち会って手術を行うぐらいなので、相当に負担がかかるらしい。
前歯は上も下もグラグラになっていて少し痛みもある。
妻は手術当日の最終の新幹線で自宅に戻った。
子供の学校があるので致し方ない。
病室に戻ったのは6時間後なので、妻も疲れたと思う。
手術で疲れたのか麻酔が残っていたのか、妻が帰るとすぐに寝てしまった。
途中で口の中にたまった血を吐き出すために、何回か目を覚ました。
翌日も点滴だらけの状態。
手術そのものよりも術後の感染症が怖い。
のどは筋肉を切り取っているし、鼻の奥は皮膚をめくって弁を作っているで、感染症のリスクがとても高い。
それを防ぐために、点滴によって抗生物質をたくさん投与する。
痛み止めも同時に投与された。
今回は尿道も痛い。
どうも尿道カテーテルは、入れるのに「うまい」「へた」があるように思える。
今回は「へた」に当たったのかもしれない。
尿道の痛さも、投与された痛み止めが効くので我慢することはできる。
のどにタンが絡んで息がしにくい。
30分間隔ぐらいで吸引を行ってもらう。
吸引用の細い管がのどに当たるため、これも痛い。
切った傷が落ち着くまで、一週間程はこの状態が続く。
痛みと、暇と(そして寂しさ)の戦いは始まったばかりだ。